向かって左がマルイカ。右はムギイカで今の時期は同じ釣り方で釣れる。ムギイカはスルメイカの子どもで食べても美味しい
標準和名はケンサキイカ。全体にずんぐりしており、胴に比べて頭が大きく、イカの中でも特に味がよいとされ人気がある。
三浦半島の剱崎方面では「メトイカ」、伊豆半島方面では「ダルマイカ」とも。沿岸の岩礁帯や根周りに小規模の群れで生息。
釣期は冬~夏。
シーズンはいつ?
繊細なアタリをねらって掛ける楽しさが人気のマルイカ釣り
マルイカ釣りは人気が出始めた当初、GWくらいからシーズンインして8月いっぱいくらいまでの釣りだった。だが、ここ数年で人気の高まりとともに釣期が一気に長くなり、現在は年明けの1 月下旬くらいから乗合船が始まる。
釣期は1月下旬~8月いっぱいくらい。人気の高まりとともに釣期も長くなった
関東近郊でマルイカ釣りが行なわれているエリアを見ると、初期は相模湾や千葉県の外房(小湊周辺)などの水深100m前後で比較的良型が釣れ、年により違いもあるが、GW頃からしだいに浅場で釣れるようになり、東京湾内でも乗合船が出るようになる。
船宿の料金は9000円ほど
タックルと仕掛けは?
ロッド
マルイカ釣りの専用ザオ、または海釣り(沖釣り)のライトゲーム用の64や73調子のものがよい。
リール
ハイギアタイプの小型両軸受けリールか小型電動リールを使う。直結仕掛けをメインに使用する場合は、手巻きだと手が滑って巻き上げが止まり、テンションが抜けた時にイカがバレてしまうため電動リールが有利だ。
電動リールは一定のテンションで巻き上げられる強い味方。船の電源も使えるがバッテリーがあるとなお使いやすい
電動リールの場合、場所を選ばず、また性能をフルに発揮させるにはバッテリーがあるとよい。写真は探見丸との同時使用もできるシマノ電力丸10Ah モデル
スッテ
イカを釣るための疑似餌。マルイカ用のレインボー、ブルー、グリーン、オレンジ、ケイムラなどのカラーを用意しよう。
まずはシンキングタイプで5cm前後のスリムなタイプと太いタイプがあるとよい。表面がツルッとしたハダカタイプが多いが、布やウイリーを巻いたものもある。
ブランコ用は浮きスッテと呼ばれるフローティングタイプやサスペンドタイプで、5叩、7cmサイズのもの。こちらは布巻きやウイリー巻きが一般的に使われる。
スッテはその日にイカが乗る色とシルエット(光の透過具合)をいち早く見つけられるとよい
スッテを一直線に配置する仕掛けを直結仕掛けという。手返しが速く、アタリがよく出るのでベテランに好む人が多い。反面、遊ぴがないので掛けてから取り込むまでの間にテンションが抜けるとバラシの連続になる。バラシが多発する時は「ブランコ」や「直ブラ」に変えるとよい。
直結仕掛けに対して、枝ス(枝ハリス)を5mm~5cmだけ出した状態でスッテを配置する仕掛けを直ブラ仕掛けという。直結よりアタリの出方は劣るが、潮の速い時などもスッテに遊びがありバラす心配が少ないので入門者におすすめ。なお、直ブラ仕掛けと次のブランコ仕掛けの場合は必ず投入器を使う。
スッテは50 mmが標準サイズ。直結の場合はイカスナップを利用すると交換が行ないやすい
基本の構造は直ブラと同じだが、浮きスッテを使い枝スを20~30㎝とる仕掛けをブランコ仕掛けという。手返しは遅くなるがハリスを長めに取って結ぶので、イカが違和感を抱かずスッテを放しにくい。ただし、ハリスを長く取るので、取り込み時も必ず投入器にスッテを入れないと手前マツリなどのトラブルが多発する。
阪本さんが使った直ブラ仕掛けの一例。使用する時は各スッテをカンナ側から投入器に入れておく。直ブラやブランコ仕掛けでは交換用のスッテにあらかじめ長めのハリスを結んでおくと交換がスムーズにできる
毎シーズン新色.新製品が出るスッテだが、大切なのはカラーにとらわれすぎず、使用しているスッテを信じること。乗らない時は何を付けても乗らない。
スッテ選びはマルイカ釣りの楽しみの1つだが、よく見かけるのが船の旋回(移動)中にスッテ交換に手間取り、次の船長の合図で仕掛けを入れられないパターン。こうなってしまうとますます釣れないので気を付けよう。
もう1つの必需品が歯ブラシ。カンナにイカ墨が付いたら掃除して汚れを取る
オモリの号数は船宿の指定に合わせる
投入機の使い方を覚える
マルイカ釣りの釣り座。手前にある筒が投入器で、リールが右ハンドルならロッドの右側に投入器を置くとよい
マルイカ釣りでは、複数のスッテを手前マツリ(船の上で仕掛けが絡むこと)なく扱えるように投入器を使う。投入器そのものは船宿で借りられるので使い方を覚えておこう。
投入器とはパイプを組み合わせたもの。船宿で借りられることがほとんど
投入器に各スッテを入れたら、最後に「トントン」と叩いて、前後の幹イトの遊びがなくなるまでしっかりスッテを落とす。これがトラブル防止の大きなコツ。なお、直結仕掛けであれば、投入器を使わずにスッテを船べりのマットなどに並べて釣ることもできる
基本的な釣り方は?
仕掛けを並ぺたらオモリを手に持っておき、船長の合図ですぐに正面に投入。遠くに投げる必要はない
投入後はサオ先を下に向けておき、着底したらすぐにイトフケを取って張らず緩めずでアタリを見る。この時アタリを見るのはイトフケとサオ先。よい時はイトフケが引き込まれる。また、何もない時も着底後は一度大きめに聞き気味に合わせてみるとよい。これで釣れるのが着乗りだ
着乗りがなければ、次にオモリを巻き上げて底から1mほど切って再びサオ先の変化を見る。数秒待って当たらない場合は、続けてサオ先をなるべく低い位置から水平の位置くらいまでゆっくり持ち上げながらアタリを聞く。
この誘い上げの時は、サオ先を水平より高い位置に持って来てしまうとアタリが見づらいほか、当たったとしてもその後のストロークが足りず合わせられなくなるので、目の高さ以上に上げないのがコツだ。
その後は、オモリが海底から3~5mくらいになるまでは、1mずつタナを上げながら各タナで誘い上げてみる。
この時、何かしらの気配があればそのタナを集中的にねらえばよい。マルイカは基本的に底近くにいるので、仕掛けの長さも考慮すると、オモリを5m以上上げたタナでねらう必要はほぼない。
誘い上げは目の高さまでで勝負
1:着乗りがない場合は、まずオモリを底から1mほど切った状態でサオ先の変化をみる
2:数秒待って当たらなければ、なるべく低い位置から水平までサオ先をゆっくり持ち上げながらアタリを聞く。サオ先の変化に注意
3:水平まで誘い上げて変化がなければ軽くシャクリ上げてストンと落とす。次はリールを1m巻いて再びサオ先を下げた状態からスタート
オモリが底から5mになるまで誘い上げる。アタリがあったらアワセを入れ一定のテンションで巻き上げよう
巻き落としは必須テク
一連の流れでアタリがなければ、「巻き落とし」と呼ばれる、一度10 ~ 20mラインを巻き上げて、イチから釣り直す操作に移る。
マルイカ釣りにおいてこの巻き落としは効果絶大で、たとえばイカが触るけれど乗せられない時も、そのまま同じタナでしつこく誘うより、一度マルイカの視界からスッテの存在をリセットする巻き落としをしたほうが乗せやすい。なお、よく当たるタナがある時は、できればリールのカウンターなどを利用し、着乗りは省いて最初から本命のタナをすぐにねらうようにしたい。
アワセのコツ
わずかでもアタリの気配を感じた時は、迷わずに聞き合わせをしてみるとよい。そしてイカの重さを感じたら、そのままサオ先とオモリが張った状態を保つように合わせる。
イカの重さを感じたらイトをたるませないように
この時にびっくりアワセをしてしまうと、海中でオモリが跳ね上がった後に落下する動きにつられてスッテの位置が下がり、イカからカンナが外れてバレるので注意しよう。
仕掛けによってもアタリの出方や注意点に差があり、たとえば今回阪本さんが釣りをした直ブラはアタリも比較的出やすく、なおかつハリスがある分、強めのアワセでもバラシは少ない。ブランコはアタリを感じた時には完全にイカがスッテを抱いている場合がほとんどで、バラシも少ないが、ハリスが長い分ストロークの長いアワセが必要になる。直結はアタリは感知しやすいが、途中でイトのテンションがゆるむとバラシが多くなる。自分の技量に合わせていろいろな仕掛けを使ってみるのもこの釣りの楽しみ方の1つだ。
うまくイカを乗せられた瞬間はこたえられない!
透きとおった美味しいイカを手にできるのは船釣りならでは
足もとのオケに生かしておいたイカは、持ち帰る前に一度ザルに移して自然に締める。そのあと密閉袋(ジップロックなど)に入れると移動中に墨で汚れない。あとは氷に直接当ててしまうと身が真っ白になってしまうので、クーラーの中では氷から離しておく
探見丸があればさらに便利!
マルイカはまず触腕でスッテを捕まえて、それからすべての脚で抱きつくと言われている。どんな船釣りでもそうだが、見えない海中であってもなるべくイメージをしながら釣りたい。
そうした中、マルイカ釣りにも便利なのが「探見丸」だ。「探見丸」搭載船であれば手もとの画面でリアルタイムの水深と地形が分かるので、オモリの着底が予測でき、マルイカ釣りで最大のチャンスである着乗りに備えやすくなる。
釣り座にいながら魚探が見える「探見丸」は、「探見丸システム」搭載船で利用可能。対応電動リールなら画面にリール水深や仕掛けの軌跡の表示もできて釣りの幅がさらに広がる
このステッカーが目印
微妙なアタリにうまく合わせて、ズンと乗せた瞬間の手応えはこたえられない。さらに食べれば美味! 釣りを楽しんだ本人はもちろん、家族からも喜ばれること間違いなしのお得な釣りだ。