スペシャル 競(きそい) SC

【24シマノ新製品鮎竿】スペシャル競(きそい) SC　松田克久＆君野貴文　富山県庄川　先調子竿で際立つ　名手の卓越オトリ操作

SCは「スピードコントローラー」の頭文字を取って名付けられた。あらゆるオトリの動きを感じ、積極的に竿を操って釣る、そんな意味を込めた先調子竿のシリーズだ。

そしてシリーズ史上、今回のスペシャル競SCほど劇的に変わった竿はない。従来であれば上位機種であるリミテッドプロSCのコンセプトを受け継いで展開する流れだった。が、その伝統をまったく無視した完全新規の設計が採用されたからだ。

最大の特徴は基本性能である緻密な操作性がさらに高まり「ピンセット感覚、指先感覚」のレベルに達したこと。そして、曲がりを突き詰めテンションコントロール性能を高めたことで引きやすく、タメがきく。もちろん軽量化の達成もマストだ。

進化の理由。それは先端部にあたる穂先・穂持ちの作り込みと、それを受け止めるメインボディ下部のあらたな設計にある。ベンディングカーブを見れば一目瞭然だが、#1～2をしなやかに、＃3以下も各節をより高精度にチューニング。

つまり、ぎくしゃくした曲がりをなくすことが引きやすさ、タメ性能のアップに繋がった。この安心感はこれまでになかったものだ。

そして先端部のマイルドさがもたらしたのは、さらなるオトリのなじみとゼロテンションを捉えるスイートスポットの拡大。それはSC本来の得意分野であるオバセ操作だけでなく、ゼロテンション周辺の「吊るし」など超低負荷ゾーンのあらゆる操作の精度向上を意味する。

今作はアイテムを2つに厳選しているのも特徴。85のH2.6は軽く操作性に優れた近年のニュースタンダード。90のH2.75は定番のスペックでオールシーズン、幅広く魚のサイズやエリアに対応する。いずれも使用する水中糸を選ばず、さらに多くの方におすすめできる「真のオールラウンド先調子」に仕上がった。

操作性を維持したまま両立させたい性能がある

2023年9月下旬、松田克久は富山県庄川にいた。天然遡上中心のフラットな川相。引き釣りにうってつけのフィールドで手にするのは新しいスペシャル競SC90だった。

先調子の鮎竿の強みは操作性である。しかし調子を操作寄りにシフトすればするほど突っ張り感が増し、引きにくさやタメにくさ、抜きにくさといったマイナス面が頭をもたげてくる。腕に覚えがある釣り師なら“ピーキー”な調子は好みかもしれないが、オールラウンド性能は犠牲にせざるを得ない。

絶妙に胴に入り、タメがきく  広角引き釣りも思いのまま

「先調子は釣っていて軽くてラク。一日の釣りの中で竿を頻繁に動かすので、実際の自重のグラム数じゃなくて持ち重り感が少ないとあらゆる操作が快適にできます」

松田が得意とするのはオトリを横方向に展開させて探る広角引き釣り。先調子竿をシモ竿で構えると通常はリスクも大きいが、そこをあえてSCで釣るのは、オトリの鼻をピンセットでつまむような操作性を維持したまま、引きやすく、そして掛けた後ものされにくく進化しているからだ。松田は言う。

「本当のピンピンの先調子じゃなく若干あそびがある。今までは＃1～2を硬め、＃3を軟らかめにしていたんですけど、今回は＃1～2もしなやかになり＃3～4へとうまく力が働く。だから引きやすい。前モデルは掛かってから胴に“ロック”がかかって抜きにくい、のされるという話もあったんですけど、絶妙に胴に入る調子に変化しましたね」

広角に構えて竿先より沖にオトリが出ると、オトリのなじみが悪くなったり浮きやすくなってしまう。

先調子はここでテンション調節が瞬時にしやすい利点もあるが、先端部のチューニングが施された新しいSCはこのような操作がさらに容易になった。なじませたオトリをさらに沖へ展開させ、対岸ヘチの竿抜けスポットすら狙うことも可能だ。

秘めたるパワーは予想以上  抜いたのは25cmクラス

また、SCが本来得意とするのは泳がせ釣りだが、松田も解禁当初の中小河川では竿を立てて釣る場面がある。そのときライン素材の違いを気にせずフロロやナイロンを使えるのも強み。先端部の軟らかさを利用すれば繊細で多彩な操作もできる。

その一方で必要十分なパワーも兼ね備え、瀬でも22、23cmなら問題ない。しかし松田が抜いたこの日一番のサイズは25cm近かった。

「デカい！ このサイズだよ。これならFWやVSを使っている人でも違和感なく使えると思いますね。本当に釣り方も糸も選ばずクセがなく使える竿になりましたね」

引く、泳がせる、管理する  より繊細にできる85

松田とともに10年ぶりの庄川で竿を出す君野貴文。流れが駆け下る瀬であらたなスペシャル競SCの引き性能と抜き性能に満足感をおぼえつつ、泳がせ釣りにスイッチする。

ナイロン水中糸を用いたオバセの釣り、そしてメタルラインとオモリを併用した超浅場の“完全管理”の釣り。どちらも竿がいい仕事をしてくれた。そして君野が手にしていたのは85。より繊細な操作が活きるH2.6のパワー設定だ。

オバセの感度が“抜けない”  今までにない新感覚

「9mより50cm短いだけなんですけど軽い。とくに風が吹いたときはてきめんです。あと85はH2.6なのでワンランク細い仕掛けや小さなオトリも扱いやすくなっています」

あらゆる操作を的確にこなせるのが今回の85だと君野。ひさしぶりの庄川でも技の限りを尽くして水中の情報を集め、数を重ねていった。

「最近はオモリを付けた泳がせをよくするんですけど、オモリをその川の“タナ”に合わせる操作もこのSCは非常にやりやすい。また、硬い竿でオバせるとテンション、感度が抜けちゃうんですけど、先端部の軟らかさでそれが抜けない。これは今までにない新しい感覚ですね」