尾長グレを憧れで終わらせない
尾長グレに強い憧れを抱くアングラーは多い。しかしながら、水面にその姿を見たとき無情にもハリス切れにより天を仰ぐシーンも多くないだろうか?
尾長グレ等の大型魚とフカセロッドで対峙した経験が浅い方や、ファイトに慣れていないアングラーが夢へ近づくための一歩としてアングラーが道具の最大限の活用出来る調子をコンセプトに2020年秋より構想が立ち上がったマスターチューン尾長シリーズ。
初期プロトでは従来通りの細身肉厚胴調子設計の尾長ロッドを数本持ち込み47㎝の尾長グレをはじめとし、様々な大型魚も多数キャッチ。しかしながら、反発力が高く、ロッドワークが高いレベルで要求されるためボツとなった。
第2プロトを制作しての舞台は高知県・沖の島の名磯:東のハナの高場。ここでは第一プロトに比較して反発力を抑えたモデルを作成。ここで52㎝の尾長グレにハリスを飲まれた状態でキャッチすることに成功。新しい尾長ロッドの可能性を発見するが同時にここから長い迷路に迷い込む。というのも、このロッドを持ち込み
インストラクターの平和卓也氏と実釣をした際にロッドをノされた状態で、ハリスの強度以上の仕事をできるロッドでないと今回のコンセプトは実現できていないと指摘されてしまったからだ。
平和氏からの課題は言い換えるとこの試作ではロッドの叩きの抑制が出来ていないということであった。上級アングラーではこのロッドの叩きが反発力としてパワーと捉えられ、適切なロッドワークへのサポートとなるが大型魚とのファイトに不慣れなアングラーにとってはロッドの叩きは不安を生み出すマイナス要素になる。
ここからこのロッドの叩きを抑えるという課題に対して長い迷路へと迷い込んでしまう。
打開策への道が見えたのは高知・柏島のアンパンでのへら竿の設計をヒントとした試作。ロッドの釣り味を重視するへら竿のしなやかさを磯竿へ取り込む試みは40㎝代の尾長グレを竿一のタナからハリスを飲まれた状態で釣り上げるという結果になった。これを磯竿で表現するためには?という思想から従来では想定しない低反発素材の採用という選択をする。これを実際に使用すると全く魚は浮いて来ないが、ロッドは叩かないというロッドが出来上がり、またしても壁へとぶち当たる。低反発素材を利用して大型尾長グレを浮かすには…
悩んでいた際に新しいアプローチとして太径設計で作ってみようというとんでもない提案が生み出された。従来の常識では尾長竿=細身・肉厚。これは四国西南部の尾長グレ攻略のために求められる強い季節風に対応する風切り性能と肉厚によるファイト時の安心感の創出ということから出来上がった常識であった。
言い換えれば、風の強い状況ではなければ、肉厚設計でなくても安心感が表現できれば尾長竿として成立するのでは?という新しい疑問が生まれた。
すぐに試作を作成し、フィールドテスター岡崎保仁氏と実釣。高知・沖の島、東のハナ高場にて、尾長グレ8枚・55㎝超えのイスズミをハリスがズタズタになりながらキャッチする釣果で新しい尾長ロッドの可能性を強く感じた。この結果を踏まえ、フィールドを変えても釣果は出るのかという検証も含め、インストラクター森井陽氏と共に長崎県・五島列島・大瀬崎へ釣行。ここでは竿一本以上の深ダナから尾長グレ40~50㎝クラスを30枚以上キャッチ。そのキャッチ率の高さは太径設計の見た目のインパクト以上に驚きをインストラクターへ与えた。最終テストの極めつけは岡崎保仁氏の鵜来島・水島2番奥奥での66㎝。実は、この魚をキャッチする前の週に大型尾長グレをばらしたという岡崎氏があのプロトなら釣れるかもしれないと連絡が来たため、すぐにプロトを発送。この見事な有言実行によって2年に及ぶ実釣での様々な苦悩と議論と検証が結果を導き出した達成感は表現が難しい。尾長グレ等の大型魚とのファイトに自信がない方は是非使って、この新感覚を体感していただきたい。きっと自身のレコードーフィッシュへ近づく相棒になることでしょう。